光のもとでⅠ

「この鍵は?」
 この鍵だけは見たことがない。
 翠は携帯を手に取り、
「これは唯兄からもらったものなの」
 愛おしそうに鍵を見ては、人差し指でそっと触れる。 
 とても大切なものに触れるように。
 指でつついたくらいじゃ壊れるはずもないのに、触れたら壊れる、みたいな様子で。
「ふーん……」
 なんでもなさそうに答えたけれど、実のところはあまり面白くなかった。
 秋兄が渡したストラップには負ける。
 でも、鍵ととんぼ玉なら価値的には五分五分。