光のもとでⅠ

 紅葉祭の日を境に、とんぼ玉を見ることはなくなった。
 時期的には翠が記憶を取り戻した頃と重なり、とんぼ玉ひとつとっても相当戸惑っているであろうことは予想していたが、まさか携帯につけられていたとは……。
 じっと見つめるも、バランスが悪い、の一言に尽きる。
 ひとつは精巧なつくりで現代らしいアクセサリー。
 そのとなりにあるとんぼ玉は粗雑なつくりのガラス玉。
 そして、もうひとつはアンティーク加工が施された、トルコ石がはめ込まれた鍵。
 どこからどう見てもアンバランス。
 色味も何もかもが噛み合わない。
 でも、持っていてくれたことが嬉しかった。