すると、風呂上りらしいハナが廊下にいくつも足跡をつけてやってきた。
 いつもきれいにブラッシングされている自慢の毛は、濡れてぺったりとしている。
 頭や身体の輪郭がはっきりとわかるその様は、ずいぶんと貧相なものだった。
「母さん、ハナがかわいくない……」
「あら、ひどいわね。これからドライヤーをかけてふっさふさのかわいいハナになるのよ」
「エイリアンみたいに見えるから、早いとこ乾かしてくれない?」
「ハナ? 司のこと噛んでもいいわよ? 私が許すわ」
 ハナは会話の内容がまるでわからないらしく、珍しくもきょとんとした顔をしていた。