散策ルートに入って十五分ほど歩くと、先週秋兄と話をした藤棚に着く。
 そこにはもうひとり、藤宮の人間がいた。
 翠もそのことに気づいたのか、ゆっくりと、恐る恐る俺の顔を見る。
 目が雄弁に、「どうして」と物語る。
 戸惑っているのが丸わかり。
「さぁ、どうしてだか……」
 俺は適当に答えた。
 藤棚にいたのは秋兄。
 今日、リベンジでここに来ることを知らせていた。
 別に知らせなくてもよかったんだけど、なんか空気が悪くて……。
 知りたかった。とりあえず、三人で会ってみたかった。
 それで翠を困らせることになったとしても。