「なぁ……デートって? ふたりともいつの間にそういうことになってんの? 俺、聞いてないんだけど」
「そういうことって……何?」
 海斗がのんびりとした口調で口を挟み、翠はきょとんとした顔で訊き返す。
「……話の流れから察するに、藤宮先輩と御園生は付き合うことになったんじゃないの?」
 翠は血相を変え、珍しくも早口で話し始めた。
 それは否定。
 余す余地なく否定オンリー。
「デートって違うよっ!? 海斗くん、違う違うっ。ただ、藤山の紅葉を見に連れて行ってもらう約束をしていただけっ。本当にそれだけなのっ」
 否定されることは想定内。
 ただ、ここまで全力で否定されるとは思っていなかった。