道場が学校の一設備であることも、自分だけのものではないこともわかってはいたが、自分ほど早く道場に来る人間はいなかったし、早く来れば自分ひとりの時間を確保することができる。
 が、高等部に上がって事態は一変した。
 それまでバスケ一辺倒だったケンが弓道部に入部したのだ。
 ケンは俺より早く道場に来ることを目標としていたようで、道場にひとり、という時間を毎日得ることはできなくなった。
 しかし、それは途中でパタリと止む。
 今は大会前など、よほどのことがない限りは決まって七時を少し回った頃にやってくる。
 今日もそうだった。