部室棟を離れた俺は、庵から道場に戻ってきたよりも幾分ゆっくりと歩いていた。
 桜香苑を抜け梅香苑に抜ける。
 くねくねと曲がる道をショートカットすることなく、道の流れに身を任せるようにして歩いていた。
 開けた場所に出ると、照明が少し賑やかになる。
 そこは大学の敷地内で、同じ時間でも高等部よりは人の行き来が多い。
 右側に梅香館があり、正面にはカフェがある。
 俺はカフェと校舎の間を突っ切り藤宮の私道へと足を向けた。