「若槻さん、大丈夫ですか?」
 しゃがみこんで視線を合わせると、
「あぁ……リィの声って癒しだよねぇ……」
 と、目を瞑ったまま口にする。
 うーん……相当きている気がする。
 そこへ蒼兄と栞さんが丼を持ってやってきた。
 栞さんの手には丼とご飯茶碗の少し大きめのボール。きっとそれが私の分だろう。
 だし汁のいい匂いに鼻をヒクヒクと反応させた若槻さんは、「讃岐うどん……」とボソリと口にしてむくりと起き上がる。
「今の俺には超嬉しい食べ物。もう消化にすら体力使いたくない」
 などと言う。
 いろんな意味で理解できる言葉だけれど、仕事をしているならそれはダメだと思う。
 蒼兄を見て、
「蒼兄のレポートと若槻さんのお仕事はどちらが大変?」
 訊くと蒼兄が即答してくれた。
「そりゃ、仕事してお金もらってるんだから唯のほうが大変だろ。責任の重さからして違う」
 あ……そっか。比べるものを間違えた気がした。
 お昼を食べ終わると、若槻さんはフラフラしながら十階へと戻っていった。