「おまえもやるかと思ったのに」
「気分が乗らなかった」
「らしくねぇの」
 気分が乗らないというのとは少し違った。
 自分の心中が射に表れるのがわかっていたからこそ、弓を持つことができなかった。
「何があったのか知らないけど、力になれることがあれば言えよ?」
 ふと思う。
 ケンの学内における情報網は侮れない。
 たとえ同じクラスになったことがなくとも、同じ学年の人間なら全員知っているだろう。
「……越谷まりあ」
 ケンは驚いた顔で俺を見た。