光のもとでⅠ

「株の操作は得意じゃないみたいだけど……」
 そうでなければ、あそこまでの大損はさせなかっただろう、という履歴を見たことがある。
「果たして本当にそうかのぉ……」
 じーさんの表情は変わらない。声のトーンも変わらない。
 ただ、妙な間があった。
「何?」
 焦らされるのが嫌ですぐに訊き返す。と、じーさんは目を戸口の方へと向けた。
「そこのファイルを見よ」
 戸口脇に置かれていたそれに手を伸ばすと、雅さんの経歴とレポート、論文がファイリングされていた。
「教育学部心理学科……?」
 うちの大学ではない。だが、偏差値が低い大学でもなかった。