どうやら、その姪もまんざらではなかったらしい。
 相手の気持ちも考えず、よくも見合いが結婚までたどり着くと考えられるものだ。
 おめでたすぎて何を言う気も起きない。
 よほどその姪に何か秀でたものがあり、俺が惹かれる自信を持っていたのか。
 藤宮の生徒なら、俺が誰に気があるのかくらいわかりそうなものを――。
 伯父にいつかは俺との見合いをさせるから、と吹き込まれた姪は、その言葉を信じ、見合いの日を心待ちにしていたという。
 しかし、先日の紅葉祭でことは一転した。
 佐々木は俺の意中の人間が翠だという情報を得て、姪と俺の見合いは早々に諦めとある中小企業の跡取り息子との見合いをねじ込んだ。
 迅速かつ的確な判断だったと思う。
 無理に話を進めようとした結果、秋兄を怒らせ出向されたのだから、これ以上藤宮の不興を買うわけにはいかないと考えるのが普通だ。