話の続きはレストランの個室で。
 マグカップを手にした翠がびっくりしている様ならすぐに想像することができた。
 その後、話の続きが始まれば、俺は盗聴していること自体を後悔する。
 翠の告白は一時間半近く続いた。
 その一時間半は、翠にとっても俺たちにとってもつらく苦しい時間だった。
 翠は記憶が戻ったことでひどく苦しんでいた。
 そして、そのことに目の前の人間が苦しんでいる。
 けど、こうなることはわかっていたこと。
 記憶が戻れば俺と秋兄の間で翠が苦しむことなんて、最初からわかっていたんだ。
 何が気に食わないというのなら、すべて自分のせいにしようとしているところ。
 人と人が関われば、誰かひとりが全部悪いことにはならない。
 関わった人間誰もがどこかで責を負う。
 それを翠も秋兄もわかっていない。