翠とじーさんはいくつか言葉を交わした。
 決して多い言葉数ではなかったが、それを話すのにひどく時間を要していた。
 そして、きりのいいところまでくると、じーさんはパレスへ戻るように誘導し始める。
 翠のことだ。
 自分のことではなく、じーさんの身体のことを考えればおとなしく戻ってくるだろう。
 翠がポツリポツリと話す言葉を聞いて、こんな盗聴をする必要はなかったかもしれない、と思った。
 翠が自分を責めていることには気づいていた。
 聞かなくても、話してくれなくても、それだけはわかっていたんだ。
 もっと言うなら、自分を責めて何も選ばないことだって想像はできていた。

 じーさんは応接室に戻ってくるなり風呂敷の包みを解くように俺に指示する。
 包まれていたのは桐の箱だった。
 それを見て、俺より先に秋兄が質問する。
「何それ」