じーさんが部屋を出てから二十分ほどすると、俺のパソコンから音声が聞こえ始めた。
『もし、もし?』
 昔俺が開発したものは病院で使うことが前提だったため、単なるマイクロレコーダーだったわけだが、今回のこれには無線機能が追加されていた。
 ただ、ごくシンプルな無線機能が追加されただけなので、通信機器としては不十分。
 向こうの音声を拾うことはできるが、こちらの音声が向こうに届くことはない。
 ボールペン型集音機はマイク機能のみでスピーカー機能はついていないからだ。
 つまり、どう逆立ちしても盗聴にしか使えないアイテム。
『こんなところで寝ると凍死するぞえ?』
 穏やかで優しい老人の声だった。
『っ……ろ、げんさん』
『久しぶりじゃのう?』
 彼女の細い声も聞こえてきた。
 ふたりが再会の挨拶をしているとき、司に訊かれる。