光のもとでⅠ

「雪が降ってきそうな空模様じゃの……」
 その言葉に専属医が動いた。
 スーツの内ポケットに手を入れピルケースを取り出した。
「会長、予防的にお薬をお飲みください」
「そうするかの」
 じーさんは薬を受け取りミネラルウォーターで飲み下した。
 そのあと、司が確認するように尋ねる。
「吸入器は?」
「持っておるわ」
「ならいいけど……」
 無愛想ではあるが、司は司なりにじーさんの体調を気にしているのだろう。
 じーさんの喘息は症状が軽いものではない。
 発作が起きるとたいていは病院送りだ。