光のもとでⅠ

「久しいのう」
「はい。ご健勝そうで何よりです」
「ここは寒い。木田も身体に堪えるんじゃないかの?」
「私はこのパレスができてからずっとここにおります。この寒さも日常の一部です」
「そうかの? お互いもう年じゃらかのぉ。身体には十分気をつけるように」
「お言葉ですが、私は会長よりも二十三歳も若いのですよ? 静様にお暇を出されない限りはこちらで働かせていただく所存でございます」
「ほぉ……そんなにわしよりも若かったかの?」
「はい、残念ながら」
 木田さんはにこりと笑みを浮かべた。
 じーさんとこんなふうに会話ができる従業員も珍しい、
 一通りの挨拶が済むと、木田さんはテーブルに置かれたカップを目にしてすぐにそれを下げた。