彼が部屋を出て十分と経たないうちにリネン回収の人間が訪れ、俺はそのカートに乗り込みリネンをかぶせられた状態でバックヤードへ移動した。
 バックヤードに入るとすぐ木田さんの声が聞こえた。
 俺をここまで運んだ従業員に労いの声をかけ、かぶせてあったリネンを取り去る。
「このような方法で申し訳ございません」
「いいえ、実に乗り心地の良い移動でした」
 俺はカートを降り、ここまで運んでくれた従業員に礼を述べるとすぐに応接室へ向かった。
 廊下ですれ違う従業員は俺に気づくと皆軽く会釈をする。
 ここの従業員に限って表で私語をするとは思えないが、従業員の口から俺たちのことが彼女の耳に入ることを懸念した俺は念のために尋ねる。