「眠れない、か……」
 こんなところまで逃げてくるほどに、彼女は追い詰められているのだ。
 けれども、明日には藤倉へ帰らなくてはいけない。
 それは、彼女の中で決められている決定事項。
 君は家族からも遠く離れたこの場所で、ひとりでどんな答えを出すのかな。
「……なんてね」
 こんなとき、君が出す答えは安易に想像ができる。
 あの日、幸倉運動公園で俺に言ったみたいに、また好きな人の手を離すんだろう?
 大好きな司の手を離し、俺と同じように距離を置き、またひとりになろうとするに違いない。
 そして、司はあのときの俺と同じように決してそこで引きはしない。
 君は泣き虫なのに甘えてはくれず、寂しがり屋なのにひとりになりたがる。
 ……逃げてごらん。ひとりになってごらん。
 それで気が済むのなら。