社長室には日下部人事部長と日比野人事副部長が揃っていた。
 深刻な表情をしたふたりの向こうには大きな椅子に身を預けた父さんがいる。
「静くんに人選ミスじゃないかと指摘されたよ」
 父さんの言葉に、そう言われても仕方ないのでは、と思う。
 だが、今回の人選ミスはどうしたことか――。
 この切れ者ふたりがあんな人選ミスをするとは思いがたい。
「何があったんですか」
「秋斗様、先にこちらのファイルをご覧ください」
 日比野さんに手渡されたファイルには、自分が推薦しようと思っていた警備員の名前が並んでいた。
 藤守武継を始めとするほか九名。
 その中には先日昇格したばかりの武明と武政の名前もある。