学校の仕事部屋で書類をチェックしていると、じーさんから連絡が入った。
『庵へ来い』
 こちらの返事は聞かずに通話が切られた。
「……っていうかさ、俺、夕方から会議なんだけど」
 そんな言葉が誰に届こうか。
 大きなため息をつくとパソコンをシャットダウンしてジャケットを手に取った。
 じーさんのところへ寄ってからマンションに戻って着替えて出社。
 そんな算段を立て、必要なものを持って仕事部屋をあとにした。

 庵前の駐車に車を停めるとじーさんが庵から出てきた。
「用って何?」
 車は降りず、運転席側の窓から訊く。