さも当然、と言わんが如くの返答だった。
「お嬢さんに会わず、陰でおとなしくしていられるのなら連れていってもよかろう」
 俺は息を吐き出しその条件を呑んだ。
「わかった。翠のことはじーさんに任せる。帰りは別でいいから連れていって」
「よかろう。……さ、明日は早いからの。わしは帰るとするわい」
 じーさんは意気揚々と帰っていった。

 翠……。
 逃げるだけじゃ問題は解決しない。
 翠が逃げても俺と秋兄が追いかけるまでだ。
 それに、翠の記憶が戻ろうが戻るまいが、何が変わるわけでもない。
 これから嫌というほどにわからせてやる――。