「部活は午後に出られなくても朝練でまとまった時間練習してるから問題ない」
「でも……」
「もっと言うなら、朝の練習に重点を置いている。午後は後輩指導も入るから、自分の練習はそんなにやらないんだ。だから翠が気にする必要はない」
 それは本当なのかもしれない。司先輩が嘘をつく人には思えなかったから。
「……ありがとうございます」
 マッサージに集中するように言われたのに、結局はごちゃごちゃと色んなことを考えていた。
 だめだ、集中しよう。
 どういう状況にあろうと、司先輩が私に時間を割いてくれていることに変わりはないし、この先輩が自分で言い出したことを反故にするとも思えない。
 それなら、お返しのマッサージくらいはきちんとしたい。
「翠の手は小さいな……」
 まるでひとり言のような言葉だった。けど、
「骨が刺さるみたいで痛いですか?」
「いや、そうは言ってないけど……」
「本当? 前に蒼兄に言われたことがあるから、また同じことを言われるのかと思いました」
 クスクスと笑いながらマッサージを続けていると、食器洗いが済んだ栞さんがハーブティーを淹れてきてくれた。