光のもとでⅠ

「翠葉ちゃん。……何か思い出した?」
「っ……いえっ――」
 彼女は俺の質問に対し、強く短い言葉で否定した。
 どう見ても反射的と取れる間合いで。
「……そう? その話からだと、さっきの『みんな』が指すものは俺の身内、かな? あとは蒼樹や唯?」
 俺は白々しく話の続きを口にするものの、頭では彼女の記憶のことばかりを考えていた。
 本当は、なくした記憶の話をしたときのことではなく、記憶そのものが戻ったのではないか、と。
 それは漠然とした直感だった。
 彼女の性格を考えると、俺に抱くであろう罪悪感はふたつ。
 ひとつは俺の気持ちに対する罪悪感。
 もうひとつは、記憶が戻ったときに感じるであろう罪悪感。
 俺は戸惑いながらも平然を装おう。