あぁ、そうか……。
 彼女は紅葉祭二日目に司の気持ちを知ったのだ。
 その司の好きな人を俺が知っていたことを不思議に思ったのだろう。
「翠葉ちゃんを好きなことを知っていたのか、かな?」
「……はい」
「そうだな……本人から聞いたというよりは、司をずっと見てきたから知ってるっていうのが正しいかな」
「え……?」
「俺は翠葉ちゃんも見てきたけど、司のこともずっと見てきたんだ。それこそ、小さい頃から……というよりも、生まれたときからね。その司に変化があればすぐに気づくよ。こと、他人に興味を示さなかった司が初めて関心を示した人間が翠葉ちゃん、君だったから」
 彼女は目を瞬かせる。
「さ、続きは車の中で。翠葉ちゃんは上履きを靴に履き替えてこなくちゃでしょ?」