今日、翠が登校してくることは姉さんから聞いて知っていたし、一限が終わる頃には翠が登校してきたことが噂になっていた。
 噂を耳にする、というよりは、噂に敏感な嵐が情報を運んでくる。
「翠葉、今日から登校だって」
「知ってる」
「なーんだ、ちゃんと翠葉から連絡入ってるんだ。つまんない」
 つまらないと言いつつも嵐の顔はにやけている。
 そのしまりのない顔をどうにかしろ、と言いたい。
 それに、俺は翠から連絡があって知っているわけじゃない。
 姉さんが俺いじりたさに電話をかけてきたから知っているだけ。
 翠からメールの返信がなかったのは初めてだと思う。
 そんな些細なことを気にする自分はどうかしている。