図書棟一階にあるロッカーのひとつが「出口」になる。
 湊ちゃんからの内線が鳴るとほぼ同時、携帯に生体反応のデータが転送されてきた。
『今下ろしたわ。あとはそっちでなんとかなさい。私は帰る』
「はい、ありがとう。お疲れさん」
 内線を切って、パソコンで生体反応を追う。
 ふたつの点はゆっくりと確実に歩みを進めていた。
 あと二分もしたら着くだろう、というところで自分も一階へ下りロッカーのロックを解除した。
 俺が指示したとおりに中から二回のノックがあり、ロッカーを開けるとびっくり眼の翠葉ちゃんが現れた。
「不思議そうな顔してるね?」
 手を差し出すと、彼女は自分の手をす、と重ねる。
 俺は彼女を引き上げ、ゆっくりと立ち上がらせた。
「さすがに誰もが地下道を使えたら警備上まずいからね。入り口にはすべて鍵がかけられているんだ。中から開錠する方法もあるけど、今回は俺がお出迎え」
 これで君の疑問に答えてあげられたかな。