時刻は七時を回っていたが、俺は部室棟で道着に着替え弓道場へ向かった。
 途中、部室棟に戻る部員たちとすれ違う。
「あれ? 司、今から行くん?」
「あぁ、四日も弓を持たないと落ち着かない」
「んじゃ、鍵」
 ケンに道場の鍵を渡されそこで別れた。
 道場は今までそこに人がいたにも関わらず、そんなことを一切感じさせない静謐さがあった。
 神拝を済ませ、床の上に正座する。
 目を瞑り五感を研ぎ澄ませば、整理のつかない心が「無」とも言える空間に同調し始める。
 自分をいつもの状態にするには一番慣れ親しんだ方法で、自分を取り戻すのには最適な場所だと再確認した。