光のもとでⅠ

「姉さんから腰と背中と首ってオーダーされた」
 うつ伏せになるように言われて体勢を変えると、
「ちょっと待ってて」
 と、一度部屋を出ていった。
 戻ってきた時には毛布とバスタオルを手にしていた。
「毛布は胸の下に入れて。直接ベッドのマットよりかは楽だと思う。それから、できる限りベッドの端に横になって。壁際行かれると手が届かない」
 言われたとおりに位置をずらすと、
「髪、邪魔だから適当に編むよ」
 と、手櫛を何度か通して髪の毛を編み始めた。そして、テーブルに乗っていたペンケースからボールペンを取り出すと、それをかんざしのように使って髪の毛をまとめてしまった。
 先輩、器用……。
 もうひとつの大判のバスタオルは背中にかけられた。
「腰から始めるけど、触られるのが嫌ならとっととカミングアウトすること」
「はい」
「その前に確認。手……」
 いつかのように手を差し出された。
 その手に自分の手を乗せ軽く握ったけれど、何も感じなかった。
「先輩、大丈夫」
「なら始めるから」
 と、マッサージが始まった。