「なんだかすごく間抜けじゃない……」
 一言自分に文句を言い、コートやマフラーを脱いだ。
 手を洗うためにキッチンへ向かい、「お邪魔します」と口にしてから中に入る。
 私は少し緊張していた。
 この家の住人は不在だし、人の家のキッチンに入るなどそうそうあることではないから。
 リビング同様、キッチンも必要最低限のものしか置かれていなかった。
 ゴミ箱と思しき上にはピザ屋さんの箱が載っている。
 それを見て、昨夜の夕飯はピザを食べたのかもしれない、と思った。
「……サンドイッチ買ってきちゃったけど、おにぎりのほうが良かったかな?」
 しばし逡巡していると声をかけられた。