後方でドライヤーの音が鳴り始めたのを確認し、私は窓際へ向かった。
 カーテンを開けると空が幾分か明るくなっていた。
 それでも、照明なしの室内は暗い。
 照明のスイッチを点けると、びっくりするほど簡素な部屋だった。
 引越してきて数日しか経っていない、と言われたら、疑うことなく信じただろう。
 ダイニングとリビングの両方で二十畳ほどの部屋には、テレビとちょっと大きめのローテーブルがひとつ。
 クッションが点在してはいたものの、ほかに何があるわけではない。
 この何もない中、私はクッションに躓いて転んだのだ。