確かにそうだ。
 ツカサにだって警護はついているはずだし、携帯さえあればコンシェルジュを呼ぶこともできただろう。
 何より、ここはホテルにも近い。
 ホテルの人に頼むこともできたかもしれない。
 でも、それならどうして――……不安、だから?
 私はタオルから手を離す。
「ツカサ、唯兄お勧めのコーヒーとサンドイッチを買ってきたから、ちゃんと髪の毛乾かしてから食べよう? 私も朝ご飯食べなくちゃ」
 頭にタオルをかぶせたまま、ツカサの両腕を掴んだ。
 背に回されていた腕がほどかれる。
 わたしはツカサの手を取り、ドアが開いたままの洗面所に向かって歩きだした。
 顔は見ない。
 何度も「見るな」と言われるのは堪えるから。
 ツカサを洗面所に押し込めると、私は買ってきたものを持ってリビングへと向かった。