そのマンションはウィステリアホテルと藤倉駅のちょうど間くらいにあり、表通りから二本裏に入った場所に建っていた。
 裏通り、といっても物騒な感じはしない。
 駅に近いというのにうるさくもなければさびれたふうでもなく、オフィス街のような町並み。
 目的のマンションはグレーを基調とした建物で、道路に面する場所には円錐形に刈り込まれたキンメツゲが植わっている。
 その根元にはオタフクナンテンの赤がとてもきれいに映えていた。
 ぱっと見ただけでも手入れの行き届いたマンションであることがうかがえる。
「行っておいで。待ってるから」
 蒼兄に言われ、シートベルトを外す。
「部屋番号覚えた?」
「うん、5010号室」
 話を聞いた記憶はなくても情報は頭の中にある。