外は暗い。
 もうすぐ人が起きだす時間だというのに、そんな気配が微塵も感じられないほどに。
 腕時計を確認すると五時十分前だった。
 屋内駐車場に止めてあっても車に夜露はつくらしい。
 水滴のひとつひとつに右手の人差し指をつけると、小さな雫が指についた。
 冷たいとは思わなかった。
「リィは助手席。前の方がすぐにあったかくなるから」
 唯兄に促されるまま助手席に乗り込む。
 走り出した車は藤山をぐるりと囲む公道に出たものの、車は一台も走っていない。
 市街へ通じる通りに出て、ようやくほかの車との行き交いがあった。
 交通量が少ないこともあり、思っていたよりも早くにマンションに着いてしまう。
 再度時計を確認すると、五時二分だった。