自室に戻り、ひんやりとした空気を感じる。
 ダイニングは広いけれど、それなりに人がいたこともあり、そこまで室温が低いとは思わなかった。
 けれどこの部屋は、今の今まで真っ暗で誰も人がいなかった場所。
「少し冷えるわね」
 お母さんがファンヒーターのボタンを押した。
 設定温度が十八度になっているため、音がそれほどうるさいわけではない。
 穏やかに、あたたかな風を吐き出し始めた。
「まずはそれを飲みなさい」
 言われてタンブラーの蓋を開ける。