「唯はいいことを言うわね? 蒼樹も見習ったら?」
 しんとしていた部屋にお母さんのカラ、とした声が響く。
「そうだねぇ……これは見習わねば」
 蒼兄が苦笑している。
 顔を見なくても声でわかる。
「まぁ、そうね……ここは司くんが話すか話さないかを決めるのがベストかしら? 翠葉も翠葉で少し気持ちの整理をしたほうがいいだろうし……。あ、唯? 別に私は翠葉を甘やかしてるわけじゃないわよ? ただ、答えを出すのに時間が必要なこともあるでしょう?」
「そう、ですね……」
 唯兄の声がとても硬かった。
 冷たくはなくて、ただ硬質……。
「そういえば、夕飯を作るの途中だったんだけど……今日はコンシェルジュに頼んじゃおうかしら?」