最初に教えられたのは、私を護衛する人たちのオーダーシート、人事異動に関する書類が社内ですり替えられていたこと。
 これは以前、秋斗さんの指示で支店へ出向させられた人が絡んでいるみたい。
 オーダーシートはその人に与(くみ)する人の手によってすり替えられたようだ。
「その重役――えぇと、とりあえずSさんってことで話を進める。この話はリィも知ってるみたいだけど、Sさんってのはさ、秋斗さんと雅嬢を見合いさせようとしていた人。雅嬢が家の人間とうまくいってないことをいいことに、秋斗さんとの仲を取り持つことで後継人みたいな存在におさまるつもりでいたらしい。ま、知ってのとおりうまくはいかなかったわけだけど。うまくいかなかったどころか、本社の役付き取締役って管理職も剥奪。あーんど、本社から支社へ出向。傍迷惑なことにさ、ここまでされても懲りない人間ってのはいるんだよ。どうやら雅嬢には秋斗さんを、自分の姪には司っちをって考えていたらしい。おめでたいよねー? たぶんさ、秋斗さんの線がダメになった時点で姪に全力を注ぐことにしたんだろうね。姪もかなり乗り気だったらしい。でも、Sさんは先日の紅葉祭で司っちが誰を好きかって情報を得たんだ。相手は秋斗さんの想い人でもあるリィ。さすがに姪の見合いを強行するほどバカじゃなかった。姪には急遽、ほかの中小企業の跡取り息子をあてがった。ま、妥当だよね? ところが、その姪は司っちとお見合いができるものと思っていたんだから面白いわけがない。財閥御曹司との見合い話が中小企業の跡取り息子、しかも自分よりも十歳以上も年食った相手と、って条件にすげ変わっちゃったんだからさ」