「翠葉ちゃん……売り言葉に買い言葉でしょ?」
 秋斗さんは優しく声をかけてくれるけど、確かに売り言葉に買い言葉だったけれど、言っていいことじゃなかった。
 売り言葉に買い言葉でもあれだけは言っちゃいけなかった。
「マンションに戻ってあたたまろう。そしたら、今回のこと全部話すから」
 今回のこと、全部……。
「翠葉、まずはマンションに帰ってお風呂に入ってあたたまりなさい。話はそのあと」
 湊先生に手を握られた。
「こんなに冷たくなって……。私が相馬に怒られるわ」
 言いながら、湊先生は少し悲しそうに笑った
「先生、私……わ、たし――」
「翠葉ちゃん、ごめん……」
 秋斗さんの声を聞いた直後、首に衝撃があった。
 私は秋斗さんの手刀で意識を手放した――。