光のもとでⅠ

「……どうしてですか?」
「んー……言いすぎたかなぁ? と思ったわけです。私、一応考えてから話してるんだけど、時々ストレートな物言いになりすぎることがあるってよく怒られるの。昨日も夜夫に怒られちゃった」
 昨日――あぁ……。
 思い出して首に手を伸ばすと、指先がぬるっとした。
「え……?」
 恐る恐るその指を見てみると、
「やだ、翠葉ちゃんっ。ちょっと見せてもらうわよっ!?」
 指先についたのは血だったのだ。
 美波さんは髪の毛をそっと持ち上げた。
「栞ちゃんに聞いてはいたけれど、お風呂上り、ここまではひどくなかったはずよ? 寝てる間に掻いたの?」
 言われて爪を見ると、茶褐色のものが詰まっていた。もしかしたら枕にも血液が付着したかもしれない。
 でも、ピアノを弾いているときには気づかなかった。白い鍵盤も汚れることはなかった。
 唖然としていると、
「まずは髪の毛まとめちゃうわね」
 と、自分の髪の毛をまとめていたバレッタを外して私の髪の毛をまとめてくれた。
 次に携帯を手に取る。
「美波よ。今すぐ救急箱を持ってゲストルームに来れる? ――お願いね」
 そう言って通話を切った。