「そうね……。それなら、私、落し物なんて拾わなかったことにしようかしら」
「え……?」
 彼女は笑みを深め池へと近づいた。
「私、面白くないことになっているの。それも全部、あなたが司様と秋斗様に好かれているからいけないのよ? あなた、どんな手を使ったの? 教えていただけない? なぜこんなにも藤宮の方々と親しくできるのか。……そう思っているのは私だけではないわ。あなたさえいなければ――あなたさえいなければっっっ」
 ギリ、と恐ろしい目で睨まれ、次の瞬間にはもとの薄ら笑いに戻る。
「幸い、あなたはこれがとても大切なようだし……。そうよね、このストラップをなくしたとあれば、プレゼントしていただいた方にお話しないわけにはいかないものね?」
 何をしようとしているのかは一目瞭然。
 携帯を池に落とされるっ――。
「やめてっっっ」