「やだ。あなたそんなことも知らずにこれを持っていらしたの?」
 知らないものは知らない。答えようがない。
「ジュエリー篠塚の篠塚誠さんは、藤宮お抱えの宝飾デザイナー。これはその方の手によるものよ。葉は十八金、このハートとチェーンはプラチナ。こんな粗雑なとんぼ玉と安っぽい鍵を一緒に通すなんて神経を疑うわ」
 カッ、と頭に血が上る。
 粗雑なとんぼ玉じゃない、安っぽい鍵じゃない。
 私にとってはどっちも世界にひとつしかないもの。 
 それをそんなふうに言われたくなかった。