そこまで考えていなかった。
 携帯は個人情報を内包しているのだ。
 こと、私の携帯は藤宮の人たちの個人情報を――。
「返してくださいっ」
「あら、何を今さら焦っていらっしゃるの? ずいぶんと遅いのではなくて? 私がこの携帯を手にしてからどのくらい時間が経っていると思っているのかしら?」
 彼女はゆっくりと話し上品に笑う。
「データなんて数分もあればコピーできるのよ? それに、いくつかの操作でこの携帯を初期化することもできるのだけど、ご存知?」
「っ……!?」
「噂は本当なのね。機械には疎いって……」
 データをコピーされてしまったのだろうか。
 そしたら静さんたちにも迷惑がかかる。
 どうしようっ――。