目が覚めたのは三時半だった。
 ゆっくりと身体を起こし、サイドテーブルに置いてあったハーブティーを口にした。
「……さっきと違うお茶」
 ミントティーだ。
 口の中がさっぱりとして、少し感じる清涼感が清々しい。
 私は再度横になり、簡単な足のストレッチをしてからベッドを下りた。
 目的はピアノ――。
 間宮さんが使っていたピアノと言われると、未だに手が震えるし、自分が弾いてもいいのだろうか、と考えてしまう。それでも、惹かれる……。
 リビングへ行くと美波さんが雑誌を読んでいた。
「あ、起きた?」
「はい。あの、栞さんは……?」
 見渡した限り、このフロアにいそうにはない。
「お買い物。四時には帰ってくるんじゃないかしら?」
 言いながら、美波さんは掛け時計に目をやった。
「美波さん、拓斗くんは……?」
「今日はサッカーの日だから帰って来るのは六時過ぎよ?」
「それが何?」という顔をされた。
「いえ、とくには……。あの、ピアノを弾いてもいいですか?」
「どうぞどうぞ! 静さんが絶賛してたっていうから聞いてみたかったの」