「翠葉ちゃん、どうだんつつじの葉がいい感じでしょ? 櫨(はぜ)もきれいだし、落葉した桜の葉もきれいだよ。あと、少し奥に行くと小菊も咲いてる」
 秋斗さんに指差されて、紅葉が視界いっぱいに広がった。
「わ……」
 自分の周りにはこんなにも色が溢れていただろうか。
 そう思うくらい、秋斗さんに会うまで何も視界に入っていなかった。
 緑の青々とした葉っぱもあれば、黄色からオレンジ、赤へと変化する葉もある。
 足元には色とりどりの葉っぱが落ちていた。
 秋の色彩だ……。
 私が紅葉に気を取られている背後で、
「司、別に、とか答えてたけど、やっぱ迷惑だったりする?」
「さっき、迷惑か、とは訊かれなかった」
「あぁ、確かに……。困るか、って訊いたんだっけ?」
「そう」
「じゃ、迷惑ではあるわけだ」
「想像に任せる」
 私はふたりを直視することができなかった。