「秋斗さん、人に責められることで楽になるのは『逃げ』ですか?」
「そうみたいだね。でも、それを求めずにはいられない気持ち、俺はわかるよ」
 時刻はまだ六時を回ったところだというのに、まるで深夜のように部屋はしんとしていた。
 ふたりの話す声は日常会話よりも小さなもので、ポツリポツリと呟くように話しているのに、発した声は恐ろしいほどよく響く。
 それと同じくらい、話の内容も心に響いていた。
「記憶が戻ってつらかった?」
 私は口を開いてすぐに閉じる。
「答えられなかったら答えなくていいよ」
 責める響きを一切含まない声音。
 私は決心して口を開いた。