そんなことを思いながら、私は再び歩き始めた。
 図書棟へ行くときほど足取りは重くない。
 昇降口で靴に履き替え外に出ると、見慣れた車が停まっていた。
 傘は差さず、車まで小走りで近づくと、ドアは中から開けられた。
「お邪魔します……」
「どうぞ」
 乗ってすぐにシートベルトをしめると、車は緩やかに発進する。
 桜並木を通り高校門から公道へ向かう途中、下校中の生徒がポツポツといた。
 女の子は傘を差している人が多いけれど、男子は差していない人のほうが多い。
 車のフロントウィンドウには霧吹きをかけられたような水滴がつく。
 視界が悪くなる前にワイパーがそれらを集め、両脇へと寄せる。
 寄せられた雨水はツー、と筋になって流れる。
 その雨水の通り道に粒子は残らない。