図書棟を出ると雨が降っていた。
 雨というよりも、薄っすらと霧がかかっているような感じ。
 無理矢理言葉にするなら霧雨。
 傘を差しても差さなくても髪が濡れてしまいそうな、そんな雨だった。
「微妙な降り方だね」
「はい」
「一、二年棟の方に車を回すから、昇降口で待ってて?」
「え? マンションまで歩いて帰ります」
「どうして?」
 どうして……?
「はい、言葉に詰まった翠葉ちゃんの負け。じゃ、昇降口でね」
 秋斗さんは私の言葉を待たずに駐車場へ向かった。