秋斗さんはほとんど口をつけていないカップふたつを片付けた。
 即ち、場所を移すということなのだろう。
「お茶、せっかく淹れていただいたのにすみません」
「いいよ。その代わり、マンションでは翠葉ちゃんが淹れてくれる?」
 にこりと笑うあたたかな笑顔に心ごと包まれた気がした。
「はい」
「場所はゲストルームでも俺の家でもどちらでもいいよ」
 選ばせてくれるのも秋斗さんの優しさ。
「あの……実はまだ両親にも話していないんです。お仕事で現場に行っていて、今日には帰ってくるはずなのですが……」
 お母さんとお父さんには秋斗さんとは別に話をしたかった。
 それに、秋斗さんと話したあとなら、少し違う気持ちで話せるかもしれない、と思っている。