「翠葉ちゃん、頭を上げて? ……たぶんね、俺は君の気持ちがよくわかるよ」
「え……?」
 ゆっくりと頭を上げると、秋斗さんは苦々しく笑みを浮かべた。
「今日は色々話そう? ここでもいいけど、少し時間がかかりそうだからマンションに帰ってからでもいいよ?」
「秋斗さん、お仕事は……?」
「急ぎの仕事は終わらせてある。何かあれば蔵元から連絡が入るだろうし、場所を移動することに問題はないよ。それに、今は翠葉ちゃんときちんと向き合って話がしたいんだ。今後のためにもね」
「今後の、ため……?」
「そう、今後のため。もう、避けられたくはないからね。それは司も同じだと思うよ」
「っ……」
「だから、話そう」
 私は一拍遅れて「はい」と答えた。