「あのっ、お水冷たいから秋斗さんの手は――」
「いいよ、冷たくても。こうして翠葉ちゃんの手を握っていられるならね」
「すみません……」
 私はザー、と音を立てて流れる水に神経を集中させようとしていたけれど、お湯が熱かったとか水が冷たいとか――「温度」のことを考えると別のものを意識する羽目になる。
 それは背中に伝う秋斗さんの体温。
 秋斗さんの体温と秋斗さんから香る大好きな香りに包まれ、密着具合に心臓が壊れてしまいそう。
 ……ううん、違う。
 こんなに意識するのは「異性」だから。
 秋斗さんだからじゃない。
 これがツカサだったら、とほんの一瞬でも想像して後悔する。
 せめてもの救いは、顔はとっくに赤いということ。