「いらっしゃい」
 ドア口に立って迎え入れてくれる秋斗さんはいつもと変わらない。
 いつもと違うことといえば、白衣ではなくジャケットを着ているところ。
「こんにち――」
 挨拶の言葉が最後まで言えなかった理由は、秋斗さんが着ていたジャケットにある。
 そのジャケットは、私がコンシェルジュ経由でお返ししたジャケットだった。
「ん? あぁ、これ?」
 秋斗さんはすかさずジャケットの襟部分を摘んで見せた。
「まさかコンシェルジュ経由で戻ってくるとは思ってなかった」
 秋斗さんはクスクスと笑って、「斬新な返却方法をありがとう」と私を部屋の奥へ促した。
 そこにはすでにカップとお茶を淹れる用意がされていた。